むち打ち損傷に関する神経学的検査方法 2015.01.29
前回のブログで他覚的所見について述べましたが、今回はムチウチ症の検査に限定して書いてみたいと思います。
(1)関節可動域
検査方法
むちうち損傷においては、頚椎について、屈曲(前屈)・伸展(後屈)・回旋(左回旋・右回旋)・側屈(左側屈・右側屈)の可動域が測定されます。
自賠責認定基準
後遺障害等級認定においては、屈曲・伸展または回旋の二つが、日常生活にとって重要な主要運動とされ、いずれか一方の可動域が参考可動域の2分の1以下に制限されているとき、「脊柱に運動制限を残すもの(8級2号)」と認定されます。
ただし、むちうち損傷による頚部運動制限は脊柱運動制限として後遺障害認定されることはありません。それはムチウチ損傷による運動制限は神経麻痺、疼痛、緊張などの機能的変化により発生します。
機能障害として評価するには関節の破壊、強直、関節外の軟部組織の変化など器質的変化によるものでなければならないためです。
(2)徒手筋力検査
徒手筋力評価(MMT)は徒手によって、主要な筋肉の筋力を判定する検査法です。次の6段階で筋力を判定します。
- 5 normal 強い抵抗下で重力に対して可動域内を完全に動かせる
- 4 good かなりの抵抗下で重力に対して可動域内を完全に動かせる
- 3 fair 重力に対して可動域内を完全に動かせる
- 2 poor 重力を除くと可動域内を完全に動かせる
- 1 trace 筋肉の収縮のみで関節の動きは無い
- 0 zero 筋肉の収縮なし
神経障害部位に追って筋力低下の認められる部位は異なります。
- C5→ 三角筋、上腕二頭筋
- C6→ 腕橈骨筋、手根伸筋(橈側)
- C7→ 上腕三頭筋、手根伸筋(尺側)、手根伸筋(橈側)
- C8→ 手根伸筋(尺側)
(3)反射
①深部腱反射
深部腱反射とは、腱の打診により生じる不随意筋収縮です。中枢神経系に障害があれば亢進(過剰に強くなる)、末梢神経に障害がある場合には減弱、消失します。
- 三角筋反射 C4~6 (腋窩神経)
- 上腕二頭筋反射 C5,6(筋皮神経)
- 腕橈骨筋反射 C5~7 (橈骨神経)
- 上腕三頭筋反射 C7,8(橈骨神経)
②表在反射
表在反射とは、皮膚の刺激により生じる不随意筋収縮です。中枢神経系に障害があれば低下、消失します。
- 腹壁反射 上 T5~7
- 中 T8~10
- 下 T11~12
- 挙睾筋反射 L1,L2
- 門反射 S3~5
- 足底筋反射 L5,S1,S2
③病的反射
病的反射とは、健常者には出現しない反射です。中枢神経系の障害により出現します。
- ホフマン反射 中指を上から下にはじくと他の指が反射的に屈曲する
- トレムナー反射 中指を下から上にはじくと他の指が反射的に屈曲する
- ワルテンベルク徴候 手指掌側をハンマーでたたくと手指が屈曲する
- バビンスキー徴候 足底部の外縁を刺激すると、足指、特に親指がゆっくりと背屈し、指が開く
なお、ホフマン、トレムナー、ワルテンベルクは健常人でも出現することがあります。
そのためバビンスキーのみ病的反射と区別することもあります。
長くなったのでここで一旦止めます
次回は神経根症状誘発テストなどの神経学的検査方法を書きたいと思います。
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