道路標示の罠 2015.01.15
数ヶ月前に知人から交通事故にあってけがをしたから相談に乗ってほしいと連絡を受けました。
事故状況を聞くと両方四輪で同じくらいの道路幅の十字路直進中、左方からきた車と衝突した、出会い頭の事故でした。
そして相手方に一時停止の規制があるとのことでした。
このような事故状況であれば特段の事情(過失)がなければ過失割合は8:2もしくは9:1で相手方が過失が大きいだろうと説明しました。
その後、保険会社から過失割合は6:4でこちら(知人の方)の過失が大きいと言われたと連絡がありました。
これはおかしいと思い事故現場を確認してみると思わぬ落とし穴がありました。
路面に「止まれ」のペイントがしてありますが三角形の止まれの道路標識が立っていませんでした。
『道路交通法 第43条(指定場所における一時停止)』
車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前(道路標識等による停止線が設けられていない場合にあつては、交差点の直前)で一時停止しなければならない。この場合において、当該車両等は、第三十六条第二項の規定に該当する場合のほか、交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない
『道路交通法 2条15項、16項』
道路標識 道路の交通に関し、規制又は指示を表示する標示板をいう。
道路標示 道路の交通に関し、規制又は指示を表示する標示で、路面に描かれた道路鋲、ペイント、石等による線、記号又は文字をいう。
今回の事故現場の「止まれ」のペイントは道路標識ではなく道路標示となります。
問題は「道路標識等」の「等」に止まれのペイントが含まれるのかどうか。
保険会社は「止まれのペイントだけでは一時停止の規制効力はないものと考えている。」という主張でした。
これが通るとなると過失割合は、保険会社の言うとおり4:6になってしまいます。
一時停止の規制がない同幅員の道路であれば左方優先の原則が働き私の知人の方が過失が大きくなります。
保険会社は昭和50年12月10日名古屋高裁判決の裁判例を根拠としてこの主張を崩さないそうです。
昭和50年12月10日名古屋高裁判決とは
「道路標示の停止線は、一時停止の道路標識と併用されて初めて規制の効力を有するが、道路標識から見得る範囲内にあれば、たといある程度離れていても有効である。」
という要旨の判決です。
市道であったため、市に確認したところ「注意喚起のために道路管理者である市が設置したもので、公安委員会が設置した道路交通法上の一時停止の規制とは異なる」との回答を受けたそうです。
以上のことから今回の事故現場では一時停止の規制がある道路を前提として過失割合を決定するのは難しいと思われます。
しかし、このケースと止まれのペイントが無い道路での事故を全く同じ扱いにするのはどうかと思います。
道路標識等で一時停止の規制があるケースと同等の過失割合にしろとまではいかずとも、ある程度斟酌して然るべしと考えます。
保険会社との交渉では取り合わないかもしれませんが、訴訟や紛争処理センターなどには主張しすべきだと思います。
こういった道路は珍しくありません。
運転する際にはご注意ください。
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