交通事故コラム

所有・使用又は管理 2015.08.20

私が理事を務める交通事故業務研究会の月に一度の基礎研究会の講義内容は「任意保険」についてでした。
今日は任意保険についてちょっと書いてみたいと思います。

自賠責保険と対人賠償保険の要件の違いの一つとして「運行」と「所有、使用又は管理」が挙げられます。
自賠法3条は「運行によって」他人の生命または身体を害することを要件としています。
対人賠償保険では、被保険自動車の「所有、使用又は管理」に起因して他人の生命または身体を害することを要件としています。
自賠法でいう「運行」とは、「人または物を運送するとしないとにかかわらず、自動車を当該装置の用い方に従い用いることをいう」(自賠法2条2項)とされており、この概念規定については、判例、学説とも次第に広く解釈する傾向にありますが、自動車が格納されているような状態は「運行」にあたらないとされています。
つまり、エンジンキーを差したまま駐車しておいた車が盗まれ、人身事故が起こった場合などは、所有者の運行供用者責任が否定され、被害者は補償を受けることができない恐れがでてきます。

しかし、対人賠償保険の約款でいう「所有、使用又は管理」は自動車がおかれているすべての状態を包含する概念であり、上記のような状態でも「所有、使用又は管理」にあたります。
このように標準保険約款の「所有、使用又は管理」は、自賠法でいう「運行」よりも広く、所有者、管理者などが民法上の不法行為責任のみを問われた場合であっても保険金の支払い対象となることがあります。
ただ、注意すべきは対人賠償保険は、自賠責保険の上積み保険ですので、上記の例のように自賠責保険が無責となるような場合は自賠責保険で支払われる金額に相当する金額を被保険者が負担した上で、対人賠償保険は有責となります。

自賠責保険の限度額に満たない場合や、相当額を所有者などが負担しなければ対人賠償保険から支払われることはありません。

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