交通事故コラム

むち打ち損傷に関する神経学的検査2 2015.02.05

前回のつづきです。

(4)頚部神経の誘発テスト

①スパーリングテスト
頭部を患側(症状が出ている側)に傾斜・後屈し軸圧を加えます。
圧迫を加えることにより椎間孔を狭められるので、そこを通る神経根に障害が存在する場合、その神経根の支配領域に疼痛、しびれ感が放散します。

②ジャクソンテスト
頭部を後屈して圧迫し軸圧を加えます。
肩引き上げテスト(ショルダーデプレッションテスト)をジャクソンテストと呼ぶこともありますが、これは、頭部を反対側に倒し肩を下方へ押し下げます。
いずれも、神経根障害が存在する場合、その支配領域に疼痛、しびれ感が放散します。
※放散痛の部位によって高位が推測できる(肩→C5、母指→C6、中指→C7、小指→C8)

③イートンテスト
頭部を健側(症状が出ていない側)に傾けて固定し、もう一方の手で患者の手首を持って後方拳上するとともに、手関節を背屈します。頚部神経根症や胸部出口症候群の診断に用いられます。
神経根および腕神経叢に牽引力が加わり、これらの神経に圧迫や刺激があると支配域への放散痛が生じます。

(5)腰部神経の誘発テスト

①ラセーグテスト
患者を仰向けにし、股関節と膝関節を90度に屈曲させ、検者が膝を徐々に伸展させます。
椎間板ヘルニア等、坐骨神経(L4、L5、S1、S2、S3の神経根)に圧迫や癒着がある場合、大腿後面から下腿後面に疼痛が生じます。

②下肢伸展拳上テスト(SLRテスト)
患者を仰向けにし、下肢を伸展拳上させて、床面からどの程度上がるかによって判断します。
正常の場合、70度程度まで足が上がるが、坐骨神経に障害がある場合、大腿後面から下腿後面に疼痛が生じ、足を上げることができません。椎間板ヘルニア患者の場合、30度も上がらないこともあります。
※ラセーグテストとSLRテストは、ともに坐骨神経伸展テストとして、同じものと扱われることもあります。

③大腿神経伸長テスト(FNSテスト)
患者をうつぶせにし、膝を90度に屈曲させ股関節を伸展するように持ち上げます。
椎間板ヘルニア等、大腿神経(L2、L3、L4、の神経根)に障害がある場合、大腿神経に沿った大腿全面に痛みが放散します。

(6)画像検査

①単純レントゲン
頚椎のレントゲン検査には、単純撮影と造影剤を用いる椎間板造影(ディスコグラフィー)、脊髄造影(ミエログラフィー)があります。しかし、造影検査は侵襲的であるため、MRIにより施行頻度は減少しています。
むちうち損傷において、まず最初に行われる画像検査は、単純レントゲンです。
外傷性頸部症候群の画像診断は、骨傷や後縦靭帯骨化症などの有無の確認のスクリーニングには有用であっても、直接その病態を抽出することは困難であり、初診時の画像所見から予後の予測を行うことは困難であるし、骨病変の少ない頚椎レントゲンのみで後遺症評価を行うことは意味をなしていないといわれています。
しかし、症状を訴えていたことの一つの証明になるため撮影されていないと後遺症の評価においいてマイナスに働くことがあります。

②MRI
MRI(磁気共鳴撮影法)とは、時期と電波(高周波)による画像検査法です。
レントゲンのような電離放射線ではありませんので放射線被ばくはありません。
脊髄、靭帯、椎間板、神経根など頸椎を支持する軟部組織の描出に有効です。
頚椎性疼痛と椎間板の膨隆には相関関係があるむち打ち損傷患者には項頻度で椎間板ヘルニアや前縦靱帯損傷が認められるとの見解、むち打ち損傷後、椎間板の変性が進行するとの見解など、MRIが有用との指摘もあります。
しかし、むち打ち損傷で症状が無くても19%に異常所見が認められるとか、正常者でも40歳以上では28%に異常所見があるとの報告もあり、MRIで異常所見があったとしても事故との因果関係を認めることは困難といわれています。
医師によっては、急性期のMRIの有用性には限界があり、費用対効果を考えれば、明らかな神経症状を有するものや慢性期を除いてMRI検査は不要と考える方もいます。
ただ、後遺障害の申請においては、責任部位を観察することの診断的意義、症状が長期化している場合のスクリーニングの意味として必要性はあると私は考えます。

以上がむち打ち損傷に関する神経学的検査の一部です。
他にも筋電図検査や神経電導速度検査など有用な検査がありますのでそちらについてもいずれご紹介したいと思います。

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