交通事故コラム

症状固定の時期 2014.10.24

症状固定とはなんでしょう。

前回の記事で軽く触れていますが、 労災・自賠責では

「傷病に対して行われる医学上一般に承認された治療方法(以下「療養」という。)をもってしても、その効果が期待し得ない状態(療養の終了)で、かつ残存する症状が、自然的経過によって到達すると認められる最終の状態(症状の固定)」(労災補償障害認定必携より)
とされています。

さて、この状態をだれが判断するのでしょうか。
多くの方は主治医が判断すると思うでしょう。

正解は損保会社(又は裁判官等)です。

症状固定という用語・概念は医学会にはありません。
医学書にも出てきません。
加害者が負うべき損害賠償の範囲を線引きするための損害賠償論的(保険論的)概念です。

それでは医師が症状固定時期ではないと判断しているにもかかわらず、損保会社が勝手に判断し賠償の範囲を決定することはできるのか。

結論からいえば、できます。
しかし、医師が労災・自賠責保険における症状固定の定義を理解した上で、明確にまだ治療が必要であると考えているにもかかわらず保険会社が打ち切れば、紛争になってしまいます。
そのような状態で保険会社が無理やり打ち切ることはほぼありません。

問題になるのは損傷組織の切除・修復を図るといった根治療法ではなく、牽引療法や温熱療法など、その場凌ぎの対症療法を続けている場合です。

症状固定の時期を「患者が通院しなくてもよくなる時期」程度の認識を持つ医師であれば、対症療法でも「通院して治療を行えば一時的に楽になって帰っていく」という患者を見て「治療効果がみられる」と判断し、まだ症状固定時期ではないと考えるケースは多くあります。
これは医学的に見て間違いということはないのですが、労災・自賠責保険の症状固定の概念からいえば症状固定の状態に該当する状況となりえます。

保険会社から一方的に打ち切られても、主治医がまだ症状固定ではないと言っているから治療を続け、後に症状固定時期について争いとなってしまった場合、主治医がこの違いをきちんと把握していなければ認められないということが起こります。
行政書士が後遺障害申請のお手伝いをする上で、医師が労災、自賠責保険の症状固定という概念を理解しているのかを確認し、認識に違いがあればそれを説明することから始めなければいけないと思います。

今日の記事の内容は、複数の損保・共済の顧問に従事され損害保険協会・医研センター講師を経験されている井上久医師の著書「覚書」(自動車保険ジャーナル)に詳しく記載されています。
こちらを参考にさせていただきました。 興味のある方はご一読いただければと思います。

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