交通事故コラム

連載 第5話「運行起因性」 2014.06.02

私は続けた。

「次に「起因する」について。
さっき言った『運行』に際して事故が発生すればいいという説もあるけど、運行と事故との間に相当因果関係が必要であるとする説が最も有力とされているんだ。」

「うーん。難しくてよくわからないな。」

「今回の件に例えて考えてみよう。
今回コウくんは、駐車スペースではない場所に荷下ろしの為に停車していた車にぶつかってケガをした。
仮にこの車の状態が「運行」と認められたとしよう。

『運行に際して事故が発生すればいい』とは
・・・荷下ろしの為に車を停めていた車(運行中の車)にぶつかりケガをしたのだから、今回の件は『運行に起因する』ということ。

『運行と事故との間に相当因果関係が必要である』とは
・・・相当因果関係とは簡単に言うと、『普通〇〇したら△△するだろうとみられる関係』の事を言うんだ。
その場所に停めておくことで子どもが車にぶつかってケガをしてしまうことが一般的に予測されるかどうか。
一般的にも車の持ち主にも予想できなかったのであれば、相当因果関係は認められないから『運行に起因しない』ということになる。

一般的に予測できたかどうかを誰が判断するかというと、裁判所だ。

そこが歩行者用の通路として使われていた。
そのマンションには小さな子どもがたくさん住んでいる。
そこに停めて(運行して)いることで事故が起こるかもしれないことが予測できたとなれば運行と事故との間に相当因果関係は認められ、『運行に起因する』ということになるんだ。

要するに、その状況では完全に運行に起因しない、つまり運行起因性が認められないとは言い切れないってことだよ。」

「えっ?そうなのか?」

「もちろん、運行起因性が認められない可能性はきわめて高いけど、僕だったら保険会社の担当者に否定した理由について、もう少し詳しく説明を求めるけどね。」

「へー。そうなのか。明日もう一度担当者に聞いてみるよ。」

そして、コウくんの父親は翌日保険会社へ電話をかけた。

「先日の子どものケガについてなのですが。」

「あーはい!人身傷害保険の件ですよね。お力になれず大変申し訳ございませんでした。」

「それなんですが、相手の車が運行していなかったから人身傷害保険は適用されなかったんですよね。」

「はい。」

「運行の解釈についていろいろ分かれていて、違法駐車など停車している車に追突した事故で停車していた車に運行起因性を認めた判例があるということや、車庫に停めていなければ運行に当たるという説もあると聞いたのですが、そこについて詳しくご説明していただけませんか?」

「えっ・・・!?少々お待ちください。」

少しの間待たされた後こう言われた。

「・・・大変申し訳ございませんが後ほど折り返しお電話させていただいてよろしいでしょうか。」

つづく

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